幼い頃、足踏みミシンのカタカタという音を聞きながら

洋裁をする母の足元で遊ぶのが何よりも好きだった

 

ハギレをもらい、ただ2枚の布を縫い合わせただけの

「何やらわけのわからないもの」が宝物だった遠い昔

 

結婚し、出産し、母となり、半世紀を生きた今歩いてきた道を振り返ると

いつの時も私はモノ作りの中にいたことを、今更のように実感している

 

様々な手工芸に興味を持ち、常に自己流でチャレンジしながら

ひとつずつ引き出しを増やして来た

 

1996年の個展で【moko doll】を発表したのを機に

ドール作家として本格的に活動を開始

 

表情のあるものを作り上げることは、大変難しい面もあるけれど

ドールと向かい合い「会話」しながらの制作過程は

私にとって楽しさのいっぱい詰まった心癒されるひととき

 

手にした時、思わず微笑んでしまうような 

 

心温まるドールを制作していけるよう努力していきたい

 

Tomoko Matsumura

 


■顔

MokoDoll の一番の特徴は「顔」です。

グラスビーズの目、鼻、口…極小サイズのパーツが、しもぶくれの丸い顔の中におさまっています。リアルな顔の作りにはなっていないので、ドールの方から訴えてくるというよりも、「見る側のその時の気持ちで悲しそうだったり嬉しそうだったり色んな顔に見えてくる」というお声をよくいただきます。

パッと見の派手さはないけれど、生活の中でいつの間にか自然に風景のひとつとなって溶け込んで馴染んでいく存在を目指しています。

■手縫いです

ボディからお洋服、小物に至るまで殆どの工程を手縫いで仕上げています。手縫いならではの生地の微妙なふくらみや縫い目の甘さがとても好きです。ひと針ひと針縫い進めていく時間の中で、手作りの温かさがゆっくりと育っていくような気がしています。

■レースは必須!

和、洋に限らず、アンティークやヴィンテージの素材(レースやボタン、アンティークキルトやフィードサックなど)が大好きです!

人為的に出そうとしても出すことの出来ない「時間の流れ」そして、同じものはもう決して手に入らない希少価値は、作品に存在感と深い味わいをプラスしてくれる大切な存在です。素材の中でもレースは必須!単にそのままの状態で使うことは少なく、レースの上にレースを重ね、更にモチーフレースをビーズで留めつけたり刺繍をしたり、あるいは複数のレースを繋ぎ合わせて幅広いレースにしたり、素材そのものをオリジナルにアレンジしてから用いるようにしています。

■小物は自作する

カゴや帽子、アクセサリーなど、メインドールを引き立てるために様々な小物が必要となって来ますが、moko dollの基本姿勢は「作れるものは何でも自作する!」です。例えば靴の場合、ドールは、型紙を起こさず全てその都度イメージに基づいて布を直断ちして制作するので、靴のサイズもまちまちですが、その都度、立体裁断で作っていきます。素材もフェルトや布だけでなく、革も取り入れるなどして、様々な素材感を楽しめるようにしています。